さてさて御苗場も無事に終了。

残念ながら各賞へのノミネートは叶いませんでしたが、これまでの中で1番悩んで悩んで昇華させた作品でした。なのですごく満足はしています。悔しい思いもあるけれど。

ご来場、お立ち寄りいただいたみなさま、感想をくださったみなさまありがとうございました。
知り合いの方だけでなく、偶然立ち寄っていただいた方からも、うれしい感想をいただけたのは、それだけ心を動かせる作品を出すことができていたのかなと思っています。

初めて御苗場に出展した時、写真に短歌を書いた作品を川内倫子さんに「言葉の鮮烈さに比べて写真が全然ダメ」と厳しく言われました。(毎年この時期になると言ってる気がするけど)

言葉を持っているということは時に強みにもなりますが、バランスが取れていなければ弱みにもなるということ。これまでそれが心底わかっていなかったと思います。そして心のどこかで元々は短歌の人だからと写真から逃げていたんだと思います。

一昨年、蛎崎先生の主宰するPhotons***に申し込んだ日、突然理由もなく「申し込まなきゃ」という気持ちが降って湧いてきたのは、そういう甘えを打破したかったのかもしれません。

そして修了後、写真作家Kiiroさんの表現講座に通ったのは、撮るその先のヒントが欲しかったから。講座が終わっても作品やステートメントについて相談にのっていただき、親身になってギリギリまで指導してくださいました。

本当にお二人には感謝してもしきれません。また、ともに学んだ同級生たちとも刺激し合えたことは作品をつくるうえでも貴重でした。

文字どおり、この2年近く頭の中は写真でいっぱいで、自分自身が真から打ち込めるものを模索し最終的に今回の「セルフを多重にすること」は自分にとってどんな意味があるのだろう、どうしてこんなことをしているのだろう、と自問自答し、いきついた作品です。

テラウチさんに言っていただいた「言葉に頼らなくても言わんとしていることを感じるようになってきた。進化しているね。ステートメントの文章もすごくいい。」というのは、川内さんに言われたあの初回から数えて5回目でようやく言葉と写真の両方を同じスタートラインに立たせることができたという意味に解釈しました。

そしてセルフで多重を続けていくということは、少なくとも今回出展したセルフの3作品と同等のものを今100出せと言われたら出せるくらいの力をつけないといけない、とも感じています(っていうかある方から言われました)。

そこに到達できるのかは未知数ですが、結局、何があっても撮り続けること、出し続けることでしか何ものにもなり得ません。そして自分がそうしよう、そうしたいと願うことは、きっとできることなのだと信じます。

最後にここまで努力した自分を今は大変良く頑張りました!と褒めてあげようと思います。

以下、展示作品の全景とステートメントとなります。ステートメントのとおり、境界線を持たない私は、今生きている世界を縦横無尽に漂いながら自分に限界を作らず私だけが表現し得る世界をこれからも披露していきたいです。

onaeba2016

~ Pisces ~

私は3月生まれの魚座である。

魚座は境界線を持たない星座と言われる。
軽々と境界を越え、あらゆる海を渡る。
境界を持たないがゆえにその世界は曖昧で無秩序だ。

そしてひとたび愛すれば際限なく与えてしまう。
心も体も持つものさえも、愛のためには厭わない。
相手の悦びが自分の悦びとなり、
悦びにともなう苦痛すら受け入れてまた悦びとする。

私はその愛に葛藤する自分自身の姿を
幾重にもして表しているのかもしれない。

さかいまみ